咲く
「咲く〜もう一度、生まれ変わるために」
主人公の聡子を歌わせて頂きました。お越し下さいました皆さま、ありがとうございました。
音域的には上も下も中間もガッツリで、結構大変でした。必死笑
けど、必死になった結果いつも絶対に言われない様な言葉で色々な方から褒めて頂けました。
新しい景色を見る事が出来たのは、私の力というよりも、多分竹内さんの生み出した音楽を声にするのに「必死」だったからという部分がとても大きいです。
日頃、合唱曲に多く携わっていらっしゃる竹内さんだけあってオペラ全体が美しい「和音」に包まれた作品でした。
どんな時も決して不平不満を口にしない竹内さん。あんなパワフルでエネルギッシュな音楽を産み出されるなんて想像出来ないくらい、いつも穏やかな笑顔でその場にいらっしゃいました。尊敬しかありません。
萌さんの台本は、とても日本的な、狂気を秘めた美しさを内包していました。
全員が何かしらの心の傷を持っていて完璧な人間なんか居ないんだ、といった所がとてもリアルで。
特に、聡子の言葉は私個人の悩みや迷いとリンクする所も多々あり正直、文章を読むのが辛かった時期もあったくらいでした。
心に残る言葉は沢山ありますが、やはり聡子のアリアは突き刺さりました。
私を含め、キャスト全員が若手でオケもフレッシュで、同世代の作曲家、台本作家の方のもとで新しいオペラ誕生の瞬間に立ち会えた事は本当に素晴らしい経験でした。
とても大変でしたし、出来なかった事も多々ありますが、今後の私にとってとても大切なヒントを多く頂けたプロジェクトでした。
当日、郡総監督が発表なさっていたそうですが…また数年後にひと回り成長して、聡子と再会出来ます様に。
課題
「歌手が唯一差し出せるものは、自分の人生。これまで生きてきた人生、犯した過ち、希望や欲望。すべてをひっくるめて歌にぶち込む」
パバロッティのドキュメント映画の中で語られていた、胸に深く突き刺さっている言葉。
いつの日か、そんな歌が歌えたら良いなと思うけど、それをするには人前で心を素裸にする必要があると思うけれど、私にはまだそれが出来ない。
いざとなったら開き直る事は出来ても、その時点で「開き直り」という武器を使っている事になる。
今の私は、発声や声を褒められる事が多くて、それはとても嬉しい事だけど、それに依存すると守りに入ってしまう。
それを保とう、崩さないで歌おうとすればする程、中にある感情が声に乗ってくれなくなる。
歌い手である以上、持てる素材の中で可能な限り「良い声、良い発声」で歌う事は絶対条件だし、オケを突き抜けて客席に声が届かなければそれは「表現」以前の問題。
合唱では有りかも知れないし、マイク有りきの舞台ならそれで良いかも知れないけど(合唱やマイクの必要性を否定する発言ではありません)私はソリストとして、大ホールの端っこの席まで届く歌を歌いたい。
メゾに多用される中低音は、高音に比べて遠くに飛ばす事が難しくて自身の中の感覚を常に研ぎ澄まして的を絞る。
的を絞ると余白が無くなる。余白が無くなると表現が乗らない。乗りにくい。
声を褒められるが故に、自分の価値をそこにしか見出せず、固執して執着して主張して、主観と自己主張の強い歌しか歌えなくなってしまっている気がする。
舞台人にとって、自己主張って絶対に無くてはならないものだけど、意地になって凝り固まるのではなくて、素裸でただそこに在るだけで周りにきちんと「私」だと認識して貰えるような存在になりたい。
声は絶対に抜かないし、発声の要である中低音は決して疎かにはしない。
けど今より少し肩の力を抜いてそれが出来たら、今とは少し違う景色が見えて来る様な気がする。
遠くの客席にもきちんと聴こえて、心にも届く歌を歌えます様に。
パバロッティの声が、冒頭の様な言葉で表現されるのは、物凄い重圧と戦いながらも舞台と音楽の前では自分を取り繕う事をしなかったからじゃないかな。
文章だけじゃつまらないので、キメ顔じゃない所が気に入っている写真家の長澤直子さんに撮って頂いた1枚を。
再開
コロナの影響で、すっかり稽古場から離れておりましたが、漸く再開致しました。
年明けのフィガロまで、数件ありますがまずはこちらです。
2020年11月13日 (金)18:00 開演
テアトロジーリオ(新百合ヶ丘)
オペラ【咲く】(初演)
今回は演奏会形式を採用して行われます。
昭和音大と文化庁の合同の企画で、次世代のオペラ作曲家、脚本家を育てる事を目的とした3年がかりの大きなプロジェクトの集大成です。
当初多くの作品がエントリーしていて、そこから4作品に絞られて2年前の試演会のワークショップから私も演奏者として関わらせて頂いています。
最終的に選ばれたのが今回の「咲く」という作品。
脚本家の宇吹萌さんと作曲者の竹内一樹さん
がタッグを組んだ「挫折」「再生」をテーマとした物語です。
私は、主人公の若きマラソンランナー「聡子」を演じます。
彼女のランナーとしての迷いや挫折が私の歌い手としての部分と重なる部分が多々あり、歌う度に深く考えさせられます。
くしくも、この様なご時世となってこの作品のメッセージは聴いて頂く方の心にも強く響くと確信しています。
是非、沢山の方に知って頂きたい作品です。
万全の安全対策をご用意してお待ちしております?
ご無理なさらず、ご検討ください。
どうぞ宜しくお願い致します。
Carmen
文京シビックホールにて、カルメンデビューをさせて頂きました。
年末年始からバタバタとしていて、カルメン1本に集中出来たのは2週間ほどでしたが今出せるものは出せたのかなと思います。
ご来場下さいました皆様、ありがとうございました。
カルメンというと、歴代の名歌手達があらゆる解釈で名演奏をしている役で、メゾソプラノとして憧れはありましたが20代の頃はとても手を出そうと思えるキャラクターではありませんでした。
30代の半ばにさしかかり、カルメンを歌って欲しいと言って頂く機会が増えたタイミングでこちらの公演にご縁を頂き、大変幸運でした。
演出の直井さんは、歌手に様々な事を委ねてくださる方なので自分なりに色々と考えました。
自分の声や容姿でどの様な事が出来るのか、何が表現出来るのか。
無理矢理に色気を出そうとしたくないという話を、指揮の平野桂子さんにもお伝えしてご了承頂き方向性を定めました。……ホセとはしっかり絡みましたけどね 笑
そして、少し前の日本だと悪女と表現されがちですが、自由なだけで悪女とは少し違うかなと感じたのでその辺も必要以上に悪ぶる事は無いよう努めました。
時に、規律や常識を守る事が美徳とされた少し前の日本にあって、自分に正直に感性のまま人生を歩み、結果として人の人生も巻き込んでしまうカルメンはかなりの「悪女」だったんだろうなぁと思います。
オペラ歌手は様々な役を様々な解釈をもって歌い演じますが、どんなに自分以外を演じても素材となるのは自分自身。完璧な理想と掛け離れていても、自身の内側から出てくる物を否定するのはやめようと思えた公演でした。
初役にしてタイトルロールデビューだったのに、初めて通ったのがGPで、場当たりは無し、病み上がり。
何とか無事に終幕で来たのは関わって下さった皆様のおかげです。
マエストラ、演出の直井さん、共演者の皆様、音楽スタッフの皆様、完璧なお仕事をなさるプロ集団のスタッフの皆様、そしてフランス語指導に留まらずあらゆるアドバイスを下さった江澤さん!!
本当にありがとうございました。またいつか、アップデートしてお観せ出来ますように。
スーパーオペラ「紅天女」
昨夜、オーチャードホールにてスーパーオペラ「紅天女」の千穐楽が無事に終幕致しました。
ご来場下さいました皆様、本当にありがとうございました。
この作品が、私の日本オペラデビューとなりました。
ここ数年、自身のコンサートなどで日本の歌を歌う機会が多くなりお客様からの反響も良くて、「やはり日本人なのだから母国語のオペラも勉強してみたいな」と思い始めていた矢先に目にしたのがこの「紅天女」のオーディションでした。
とにかく受けてみない事には何も始まらないと思い、オーディションは別の本番(偶然にも、タイトルロールの小林沙羅ちゃんと同じ現場でした)の期間と被っていましたが半ば無理やり受けに行きました。行って良かった、本当に。
オペラを5日連続で公演する事は滅多にある事ではありません。新作の日本初演で、音楽も転換も非常に難しい部分も多かったですが、スタッフの方々もキャストも日を追う事に作品に馴染み、毎日成長を続けた作品でした。
第二幕
伊賀の局(丹呉由利子)、楠木正儀(岡 昭宏)、楠木正勝(斎木智弥)
第三幕
伊賀の局(丹呉由利子)、楠木正儀(岡 昭宏)、楠木正勝(斎木智弥)
美内先生の台本は、少女コミックの枠を超えた深いテーマが描かれていて、神や仏と言ったキーワードも頻繁に登場します。
そんな中で、私の演じた「伊賀の局」の楠木ファミリーは歴史上実在した人物たち。
紅天女が人間達への愛や怒りを壮大に歌う一方で、「伊賀の局」は人間の女性目線で夫や息子に対する愛情や、戦に送り出す心情を歌う素敵な役どころでした。
「行かないで、あなた」と始まるアリアは、本当に無駄のないシンプルでダイレクトな歌詞で、それ故の難しさがありましたが、戦乱の世を生きる女性の強さや悲しみを表現出来ればと思い大切に歌わせて頂きました。
☆☆☆
作曲家 寺嶋民哉先生
1度聞いたら忘れられない、美しく印象的な音楽でした。2幕で伊賀の局が登場する前のシーンに流れる楠木のテーマ(?)を聴くと背筋が伸びて「伊賀の局」になれました。あの音楽の中に生きる事が出来て幸せでした。
美内すずえ先生
どこか人間離れしている(褒め言葉)素晴らしい感性をお持ちで、だからこそあの作品を産み出されたのだと思います。読めば読むほどに考えさせられるとても深く、大切なテーマを持った台本でした。
園田マエストロ、同役の長島由佳さん
誰よりも作品を理解し、誰よりも熱く冷静に導いて下さったマエストロ。まだまだ拙い私を導いて下さり、心より感謝しています。
ベルカントのイメージだったけど、日本語も素晴らしく上手だった山本君と…
キャスト全員から女神と呼ばれていた恵理奈さん♪
彼女がいなかったら、成功はあり得ませんでした。
気持ちが溢れてしまい、打ち上げで少し酔っ払って背中にくっついてしまいました…。困った様なお顔をしていらっしゃいました………。
両チーム楠木ファミリー(息子が一人足りない?!)
とても心地よいファミリーでした。感謝。
そして、もはや言葉はいらない。由佳ちゃん……♡
写真はありませんが演出の馬場さん。
私に幸せな時間を下さった郡愛子総監督。
関わって下さった全ての皆様に感謝致します。本当にありがとうございました。
BorderlessSongs -性別を越える音楽達
今日はメゾソプラノのズボン役に焦点を当てたコンサートでした。
今までやった事が無かったのが不思議なくらい、魅力的な企画で参加できて大変楽しかったです♡
巷で猛威を奮っているインフルエンザの影響で、出演出来ないキャストが出るというこの時期ならではのハプニングもありましたが…
ほぼ満席のお客様をお迎えし、何とか歌いきりました。
↑第1部で歌ったタンクレディの衣装はこんな感じ。一緒に写っているのは大好きな同門の後半、さいかちゃん♪
宇宙服とかZOZOスーツとか言われたけど、個人的にはとても気に入ってました……え、ダメ?
タンクレディは今回のお仕事で初めて楽譜を開くアリア。
ロッシーニのオペラ・セリア作品はブッファほどの上演回数ではありませんが…。このアリアはほんっっっとうに名曲で、勉強すればする程好きになりました。
アルト歌手が得意とする声域が多用されているので、メゾの私だと「もっとこう表現したいのに、できないっ!」ともどかしく感じる部分も多くありましたが、とにかく素敵なアリアなのでそれを皆様に少しでもお伝えしたい!という気持ちで歌いました。
↑伴奏の林くんの素晴らしい音楽も光りました!!
藤原でロジーナを歌わせて頂いたのに何言ってんだ…って感じですが、ずっとアジリタにコンプレックスがあり…今回も難儀だったのですが、複数の方に褒めて頂けて少し…いや、だいぶ嬉しかったです♡お勉強して良かった!!!!!!!!
また歌いたいなぁー、タンクレディ!
そして、後半はあまり経験のないドイツ物やらフランス物やら…!
「こうもり」のオルロフスキーのクプレを歌い
「ヘンゼルとグレーテル」の二重唱で踊りまくり(かーーなり辛かった)
↑グレーテルの仲畑さんと♡
↑衣装は違いましたが、美しすぎた川越さん!
最後は怒涛の「薔薇の騎士」!!
初めてのオペラ、殆どやらないドイツ語、そして指揮者無し、お風呂の様に響いて伴奏も聞こえにくい…
正直、ドイツ物にお詳しい方には顔向け出来ないほど色々と事故りましたが…ここでもピアノの林くんの神の様なナイスフォローに救われました…。
泣きたい気分だったけど、終演後師匠からは褒めて貰えたのでそれが心の拠り所となりました。
薔薇の騎士、本当に素敵な美しいオペラなのでしっかり時間をかけてレパートリーにしてリベンジしたい、指揮有りで!!!
↑お世話になったアートマネージメントの除さん♡
何故か、私の事をすごく褒めてくれて…日頃いじられキャラな私はとっても良い気分でお調子にのりました♡♡♡
除っちゃん、お疲れ様でした♪
明日は紅天女だぁー!
紅天女in 桜新町
1月11日から5日間にわたり上演される「紅天女」の音楽稽古がいよいよ佳境に入り、稽古場が新百合ヶ丘から桜新町に移動しました。
昨日は音楽の通し稽古で、自分の出ていないシーンもじっくり拝聴致しました。
皆さん、本当に芸達者で聴いているだけでも時間があっという間に過ぎてしまいます。
特にタイトルロールとも言うべき「紅天女」「阿古夜」役の難しさといったら………!!
チラシにはスーパーオペラと書かれているのですが、美内先生がTwitterで「歌手の皆さんにとってのスーパーオペラだったんですね」と呟かれていましたが、、、いやはや本当に主役がスーパー難しいオペラだなと感じました。
主役のソプラノのお二人、素晴らしいです。
同じ役の由佳さんと。昨日は服装まで何となく似ていましたよ 笑
私達の役どころは、武家の頭領の妻。伊賀の局で検索すると詳しく出てきますが実在の人物で、愛と強さを併せ持つ素晴らしい女性です。
音楽がとても素敵が故に、表面的な「愛」の雰囲気にだけ流されると「強さ」が表現できず…。その辺りが今回の課題かなと思います。
園田マエストロの音楽作りは流石の一言で、なんとか喰らい付いてついて行きたいと思います。